慶應大経済学部2019年入試・日本史大分析

大問1はペリー以前の欧米船の来航がメインです。本文そのものは教科書レベルなので、問1、問3、問4、問6は比較的簡単に解答できると思います。問2の「清国と薩摩藩の密貿易」という表現は、一瞬「?」と思うかも知れません。問5は「蘭方医学史」の小問ですが、杉田玄白、前野良沢以外は、教科書をさらっと流していたのでは、見落とす人名です。問4(1)は、アヘン戦争はすぐに分かりますが、条約とその内容も問われており、世界史との接点も確認しておく必要がありそうです。

 大問2は、日本共産党幹部の「転向」という、かなりの変化球です。問7の人名など、堺利彦、山川均以外は、教科書ベースの通史学習では初見でもおかしくありません。コミンテルン(出題資料ではコミンターン)の日本支部として成立し、暴力革命を党是とし、テロ活動をしていた日本共産党は、社会・労働運動、社会主義運動などと結びつけて登場するのが常です。問13に象徴されるように、マニアックですが、ある意味で慶應らしい「重箱の隅」の問題です。問8、問10、問12は教科書レベル、問9は初見の資料があるかも知れませんが、cは「伝説」=民俗学、dは記紀が歴史かどうか、eは社会的病理、fは「善」というふうに、キーワードが比較的わかりやすいです。問11は地理的知識で、しかも、日本ではありません。aの西安はともかく、bはソ満国境(ちなみにノモンハンは満蒙国境)、柳条湖は満州の奉天近郊、盧溝橋は北京近郊という知識が必要になります。

 大問3は戦後政治史で、2015年までの範囲です。どうしても戦後史は疎かになりがちの分野であり、2015年といえばまだ「歴史」にもなっていないし、教科書を超える内容も多く、難問という印象を受けます。資料は首相の演説ということですが、まずやはりキーワード探し。aはイラク戦争、bは新たに発足した自由民主党、cは沖縄の本土復帰、dは日中平和友好条約、eは日米安全保障条約の調印、fは三公社の民営化。そこまではよいのですが、それが誰かを特定する必要があります。これを順に並べ替えて、問17に挿入するところまでは何とかなりそうですが、最後の問19で同じ作業をさせられる4つの資料は、どちらかといえば政経で習う政治史に近い内容で、しかも(1)の米軍施設問題の論述などは、ほぼ時事問題という出題です。

 世界史Aや政経の教材で、知識の幅をふくらませることで、プラスαの得点が可能になったと思われます。