慶應大経済学部2020年入試・日本史大分析

大問1は、記述問題がメイン。問1、問3は世界史の基礎知識が不可欠です。問2(1)は選択問題ですが正確な知識が必要。問2(2)はマニアック過ぎ。慶應らしいですが、歴史理解にも関係ないので捨てても良い問題でしょう。記述問題は問4が一番易しいかも知れません。ほとんどは教科書の知識なのですが、深い知識と理解が試されました。

 大問2は、ノーベル賞詩人タゴールが切り口になっています。「かつてこの国におけるほど、人間らしいものの存在をはっきり感じたことは、だだの一度もなかった」とまで述べているほどの親日家です。でも、日本史の「登場人物」としては異色です。慶應で講演を行ったという縁からの出題かも知れません。問5は芸術史になっていますが、教科書に散りばめられているヒントをもとにパズルを完成させるような緻密な知識が必要です。問6は外交史になりますが、資料そのものは、初見でもわかりやすいものです。キーワードは、a:威海衛租借、b:米国が日本の支那における特殊権益承認、c:朝鮮独立確認、d:英露の協約(協商)、e:旅順大連の租借権譲渡、f:清国が列国に賠償。並べ替えも、教科書レベルで答えられるはずの問題なので、取りこぼしは厳禁です。

 大問3は、統計史が取り上げられていますが、冷静に見れば統計そのものは脇役です。問7(1)〜(3)はやや難問ですが教科書を逸脱する問題ではないです。(4)は世界史の理解だけでなく年号の知識まで必要になり、もはや日本史ではありません。しかも、空欄に補充する項目が、a:田沼時代、b:安政の大獄、c:フェートン号事件であることも間接的に問われており、超難問です。(5)は初見でも、四迷:言文一致、敏:詩人、鴎外:擬古文とわかりやすいです。問8は論述ですが教科書レベル、問9(1)、問10(2)も教科書レベルですが、軍事史はなおざりになりがちなので要注意の分野です。問9(2)もそうなのですが、読み込みが必要な「重箱の隅」です。問10(1)は地理ですが、a〜cがわかればさほど難しくはないでしょう。問11、12は教科書レベルですが、戦後史なのでやや難しいです。問13は戦後経済史の常識問題ですが、問14は政治史というよりも、「自民党不祥事史」とでもいうべき出題者の嗜好を感じさせる問題です。戦後史では、内閣の交代が必ずしも政権交代につながらないので難問です。政権交代を軸に学習することが必要です。