慶應大文学部2019年入試・日本史大分析

大問1は古代史の選択問題。文化史3、政治史1の出題割合でした。殆どは教科書でまかなえる問題ですが、「解無し」が暗示されており、これを見抜くのは難しいものです。「解無し」は7世紀後半の銭貨の名称。選択肢に和同開珎がありますが、時代が合いません。難問は(ニ)でしょう。曼荼羅の名称のみならず、特徴が問われています。

大問2は幕末〜明治維新の政治史です、(ロ)は素直な問題。取りこぼし厳禁です。(イ)ヴィッドル来航の年号、(ハ)明治新政府の太政官制はやや難問です。年号については、例えば、ペリー来航の何年前にモリソン号事件があったか、ハリスが来たのは何年後かというように、軸になる事項を中心に、セットで覚える工夫をしてみましょう。組織の把握については、教科書の記述を読むだけでなく、自分で理解しやすいように図や表にまとめてみると良いでしょう。

大問3は軍人をテーマにした近現代史の穴埋め問題ですが、B「軍人勅諭」は欄外や資料には必ず登場する用語。C樺山資紀は初期議会の「蛮勇演説」の箇所で名前が出るので、用語集などで突っ込んで調べていれば、対応できる問題です。

大問4は短い複数の中世史料の解読。問1〜3は比較的簡単ですが、問4〜8は政治史ではないので難問の印象。問5の草戸千軒町遺跡は洪水によって滅びた「東洋のポンペイ」と言われる中世の都市遺跡ですが、この問題文で導き出すのは難しいです。問10の論述問題は、教科書を読み流しているだけでは荘園制と流通経済が結びつかないかも。荘園領主の多くは京都在住の「不在地主」だった→地方にある荘園から京都へ年貢を送らねばならない→水上交通業者や運輸業者が発達→それに伴って貨幣経済も発達…と因果関係をうまく繋げられるかがポイントです。

大問5は、江戸時代の史料問題。古文の読解力もある程度問われます。登場する言葉から、享保の改革だということはすぐに見抜けるでしょう。基礎知識として、検見法から定免法へ変わったことを把握しておれば、解読を助けてくれます。このような用語は、単に名称だけではなく、何を意味しているのかを具体的に抑えておきましょう。問5の田中丘隅(休愚)は足高の制で登用された人物のひとりです。最も有名なのは大岡忠相で、どうしてもそちらに目が行きがちですが、このように、「No.2の人物」、「超有名ではないが代表的な建造物」といった、教科書の片隅に出てくる事項は、意識的に調べておくようにしましょう。