慶應大文学部日本史の難問について

①先生のエピソードトークに出てくるような問題

先生が授業中に話してくれた、「実は…」というサイドストーリーで登場するような知識を問われることがあります。例えば、2017年大問3の蝦夷の首長・伊治砦麻呂。中学校教科書にも出てくる阿弖流為に比べるとマイナーな人名です。大問4の問3「『仮名手本忠臣蔵』の敵役」というひねった出題。実話では吉良上野介ですが、この本では高師直が正解です。こんな問われ方をすると、わかっていても混乱するかも知れません。2018年大問3の饅頭屋宗二、2020年大問2の松平康英なども、あまりお目にかかりません。教科書の言わば無味乾燥なストーリーの行間を、興味を持って自分なりの方法で埋めていき、知識を膨らませていきましょう。ちなみに、鶴屋南北『東海道四谷怪談』が忠臣蔵のスピンオフ作品だと知っていましたか?楽しみながら学べていること、つまり、インプットを楽しむことは意外と重要なことなのです。

②テクニカルな質問文

複雑な問題文が多く、頭を悩ませるかも知れません。具体的に見てみましょう。2017年大問4の「『将軍家』のうち、25歳の時に謀反の疑いで京都に送還され、文永の役直前に死去したのは誰か」という問題。時期が特定されているので、歴代将軍の名前を覚えているだけでは対応できません。2020年大問5の「農村救済請願運動が始まった本史料作成年の翌年から政府が実施した公共土木事業の名称」は、まず史料を年号と共に把握し、その上で細かすぎる内容を問うという超難問。お手上げでも仕方がない問題です。秀逸は、2021年大問4の「(帰国後、玄昉と共に正解で重用された)人物ではなく、時の天皇を問う問題。難問というわけでもないのですが、ケアレスミスを誘発する巧みな出題です。パズルを完成させるような慎重なアプローチが必要です。

③細かい年号

配点は高くないと思われるのですが、微妙な事項の年号が問われることが多いです。キリスト教解禁(2017年大問5)、徳川家光の将軍就任(2018年大問1)、モリソン号事件(2020年大問2)、東蝦夷地の幕府直轄化(同)などです。テーマ別に整理する中で、重要事項の年号を軸に、前後関係で各事項の年が見つかるような学習をしておきましょう。

④論述は?

2題のうち1題は取りこぼしのできない問題が多いです。例えば、2022年大問4の「院政期の政治形態と経済的基盤」はその典型です。過去7年間で2問とも超難問だったのは2020年だけでした。しかし、論述問題はある程度通史の徹底学習で対応できることもあり、地道な努力が結局のところ対応策だと言えそうです。