慶應大経済学部日本史の傾向について

慶應大経済学部2017年から2022年までの6年間の過去問から、日本史の傾向を分析していきます。時代別では明治時代と戦後が3割弱で、次に多いのが幕末以前の江戸時代史です。分野別では、外交史が最も多く、政治史はそれに続きます。問題数ベースでは、文化史が意外と多く出ました。時代別の出題の割合を、一問ずつ細かく分析してみました。結果は以下の通りです。

経済学部 割合
豊臣政権以前 3.9%
江戸幕末まで 16.5%
幕末 5.5%
明治 29.1%
大正 2.6%
昭和戦前戦中 14.2%
戦後 28.2%

明治と戦後が、それぞれ全体の3割近くを占めていますが、その次に出題率が高いのが、幕末以前の江戸時代なのです。もともと慶應大学経済学部の日本史は「1600年以降」が中心とはされていますが、だからといって近現代史に集中しているわけではなく、江戸時代以前で4分の1以上の出題があります。2020年の過去問を見ると、近世初期のキリスト教史ということで、天正遣欧使節に関する問題が出ています。それを含め、地図を使った問題が6年中5年、7題出ています。しかも日本地図は3つだけで、単純に地名を問う問題は2題だけです。
また、一つの問題の中に、連続した異なる時代が問われていることもあり、やはり時代区分と言うよりも、テーマで分析しながら学習することが効果的であるように思われます。もちろんそれは、ベースとなる政治史の知識が前提になります。次に、分野で見てきましょう。

経済学部 割合
政治史 32.2%
経済史 12.1%
法制史 4.0%
外交史 37.0%
労働史 1.5%
文化史 13.2%

政治史が多いのは当たり前ですが、出題数で言えば、経済学部では外交史(対外関係史)が最も多かったです。明らかに世界史だと考えられる分野からの出題も毎年のようにあります。通史理解の中で、旧課程「世界史A」や新課程「歴史総合」の知識を加えていくことで対応できるようにしましょう。また、意外と文化史の出題が多くあります。純然たる文化史もあれば、政治史に絡めて文学作品が問われるようなこともあります。受験生はどうしても政治史理解に関心が行くところで、総合的な歴史理解を求めているということなのかも知れません。
経済史の分野では、グラフを使った問題が頻出です。6年間でグラフは13も出ています。しかも、解読が難しいものが多いのです。13のうち、「年」が明記されているものは2つだけです。読み取りのレベルではなく、グラフの変化の形状をある程度覚えていなければならず、そこに歴史的知識を総動員し、想像力を働かせなければなりません。出題数は意外と少ないのですが、経済史は難問が多いです。
今後しばらくは、過去6年間で出題が多かった時代・分野からの出題など、全体的な傾向は変わらないように思います。特に、新指導要領への対応もあることから、世界史分野との融合が進む可能性があることには警戒が必要です。