慶應大経済学部日本史・過去問から見る近年の傾向

過去問リスト
2021 2020 2019

体系的知識を分析する

慶應大学経済学部日本史の出題範囲は、募集要項にはっきりと、①「1600年以降を中心とする」、②「基礎的理解並びに体系的理解を問う」とあります。体系的知識ということで、経済史や制度史などで、近世以前の出題はあり得るわけですが、過去6年間(2017〜2022年)の過去問を見たところ、豊臣政権が最も古い内容で、過去10年でも、例外的に簡単な琉球王国史が出たぐらいです。
体系的知識は「時代」についてではなく、テーマ史、地理的な知識や世界史の常識、グラフ・資料の読み取りなどを組み合わせた、複雑な形式で問われるという点には注意が必要です。過去問を見ても、2015年には年代順に事項を並べる問題が出ていますが、ナポレオンの皇帝即位、ウィーン会議の時期を知らないと解けませんでした。2019年にはアヘン戦争後の英清間の条約が出題されています。これらは日本史の範囲を超えてはいますが、旧課程で必修だった世界史Aでは必ず学ぶ事柄で、教養としての歴史が要求されているのです。

年号と戦後史への対応

年号そのものは問われませんが、頻出の並べ替えの問題が非常に複雑で、年号の記載されていない事項の間に、指定された項目を挿入するという形式が多いです。しかも、同じ箇所に複数の項目が入るケースもあり、また年号が記載されていない上に、同じ年に起こった出来事が並んでいることもあります。年号を丸暗記することは、労力の割に見返りが少ないものですが、近代以降の重要項目やキーになる出来事は、月単位で順番を把握して、因果関係や展開順を頭に入れておきましょう。尚、年号暗記が苦手な人は、明治以降については元号で「日清戦争27」とか西暦の下2桁で「日露戦争04」と項目と一緒に覚えることをお勧めします。戦後史、経済史が多いのも大きな特徴です。学校の授業でカバーできていないケースも多いと思います。2015年頃までの事項についても問われることや、余り馴染みのないテーマ史の出題も多いです。経済分野を中心に、記述問題が10題前後も出題されているのも大きな特徴です。単純に出来事の概要を書くだけではなく、前後関係や、そこに至る流れが問われます。史料問題への対応も重要です。解読そのものは、文中にキーワードがあるケースがほとんどなので教科書の知識が定着しておれば、初見でも判別、読解できます。図表、グラフ、地図の問題も近年多く出されています。グラフは難解なものが多く、史料に見慣れていることが突破口になると思います。出題形式は様々なので、過去問を含め様々な問題に当たり、慣れておくことが重要です。